米国株投資最大の問題である二重課税について
米国株配当金は「8%」の税金が追加で徴収されているという驚きの税制
米国株投資はここ数年非常に好調な成績を叩き出していたこともあって人気ですが、アメリカと日本における税制上、配当金に関して二重で調整されてしまうという問題があります。
助手のひつじくん国が違うから、ダブルで課税されちゃうのか〜



実は若干なりとも税金を取り戻すことができるんだよね。
でも、わざわざ税務署が教えてくれるわけもないので、淡々と投資していると本来なら支払う必要のない税金を徴収されてしまっている、といったことが起きてるんだ
今回は、この厄介な米国株配当にかかる二重課税問題についての解説と解消するための方法をお伝えします。
二重課税を考える上での3つのポイント



まずはポイントを3つお伝えします
- 米国株式の配当金は、米国と日本との「二重」の課税が発生している
- 米国株式の売却益については「租税条約」により、現地課税されない
- 米国株式だけではなく、中国株式などでも同様の問題が発生する



あれ?
配当金は二重課税だけど、売却益は二重課税ではないんだね?



その通りなんだ。
売却益は条約のおかげでセーフなんだよ



そうなんだね、ちょっと安心。
あと、米国株だけじゃなくて、中国株もなんだね



そうだね。ただ、中国株にまで話を広げてしまうと、ただでさえ複雑な話がより訳が分からなくなってくるので、今回の解説は米国株に絞って進めていくよ



そうだね。
まずは米国株の事例で、大筋を押さえることに専念するよ
ここでは具体的に、10万円の米国株配当を受け取った際のケースで、確定申告によって、外国税額控除を行う前と行った後のケースを比較してみます。



で、最初に全体イメージを掲載するよ





この図はわかりやすいね。
なんとなく、イメージは掴めたよ
まず、米国株の配当金については、10%の源泉徴収分が差し引かれた状態であなたの証券口座に入金されます。
ここからさらに日本国内で20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%+住民税5%)が課税されます。
トータルでは28%以上の課税となり、確定申告をしないと、配当金の約8%がみすみす持っていかれてしまうということになります。



配当金を受け取る段階で、必ず源泉徴収されてしまうのか〜



そうなんだよ。だから、払い過ぎている税金を取り戻すには「確定申告」するしかないんだよ
国際的な二重課税への対応
しかし、国際的な税務法系の解釈にて「1つの所得に対して、複数の国が同様の目的で課税することは好ましくない」との考えが示されています。
この考えに基づき、こういった二重課税を解消する方法として設けられたのが「外国税額控除」という仕組みになります。



今回の本題だね
確定申告によって、この「取られ過ぎている」状態の配当金課税を日本で納めている所得税額から差し引くということが必要です。後述しますが、確定申告時に所定の書類を税務署に添付することでこの処理がなされます。



ちなみに、「確定申告は面倒だ!」という場合は、「確定申告をしない」という選択肢を選ぶことも自由だよ



「諦める」ということもオッケーだということだね
外国税額控除をやった方が良い人と、あまり意味がない人



じゃあ、どういった人なら、確定申告を行ってまで外国税額控除を行うべきだと思う?



うーん、分からない・・・



答えは「年収が高い人」なんだよね。
還付金は「その年に納めた所得税」を基準とするので、年収が高いほど、外国税額控除の恩恵を受けられるんだよ



取り戻すべき対象となる税金が多い必要があるんだね



そう。だから、FIRE生活に入っちゃうと、所得税をほとんど払わなくなるので、確定申告をしても取り戻せるのはごく僅かなんだよね。
もちろん、FIRE後もしっかりと稼いでいる人は別だよ。



なるほどね〜
サラリーマン投資家に有利な税制、って訳だね



そうだね。
あとは、受領している米国株式からの配当金額が大きいほど、「所得税」で取り戻すのが難しくなる点もポイントかな
NISA口座で米国株を保有しているケースでは、日本国内における税金はかかりません(=20.315%の源泉徴収がありません)。よって、米国株の配当から外国所得税10%だけを源泉徴される形となります。



日本での税金がかからないのはありがたいけど、NISA口座って「非課税!」って謳っているのに、違和感あるよね・・・



その通りだよね・・・
米国市場の中にはADRという制度があります。
ADRはAmerican Depositary Receipt(米国預託証券)の略で、米国以外で上場している企業の株式を米ドル建てで購入するための仕組みです。
ADRの場合、その配当は、その企業が上場している国の税率が適用されます。
つまり、外国所得税が0%の国のADRであれば、そもそも配当への課税を行っておらず、配当の二重課税が発生しないメリットがあります。



あれ?となると、これらの国のADRを買えば、二重課税にならないということ?



そうだね。先に挙げたBTIやULは高配当で知られており、配当の二重課税が発生しない英国所在のADRなので、高配当かつ配当金無税狙いで購入する投資家に人気があるよ



これらの銘柄だと、NISAと組み合わせると、配当金に一切の税金がかからなくなるのか〜これ、良いね!



ただ、いずれの銘柄も本拠地としては英国で、ポンド建てなので、ポンドの価値が急激に落ちてポンド安になると、米ドル建ての配当金は減額されてしまう、といったリスクはあるけどね
外国税額控除の仕組みについて



それでは、ここからは具体的な外国税額控除の仕組みについて解説していくね
外国税額控除の限度額について
外国税額控除の限度額は所得税の額によって決まることはご説明した通りです。
そのため、所得が低いけども、米国株の配当金がそれなりにあるよ、という場合は、源泉徴収されてしまった税金を一部しか取り戻せない可能性があります。
外国税額控除の限度額は下記のように計算します。
外国税額控除の限度額の計算式
- 所得税の控除限度額=その年分の所得税の額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)
- 復興特別所得税の控除限度額=その年分の復興特別所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)
- 住民税税の控除限度額=所得税の控除限度額×12%
外国税額控除には優先順位があります。その順番は以下の通りです。



あ、もうダメだ・・・
この辺、訳が分からない・・・



だよね。多分、ほとんどの人は見ただけで吐きそうになってるんじゃないかなw
結局は、外国税額控除の順番は決まってはいるけど、納税している金額から控除するよ、ということを押さえて
外国税額控除の繰越控除制度
また、所得税が少なくて外国税額控除の限度額を超えたときは3年間の繰越控除制度が利用できます。
- 控除対象外国所得税の額が控除限度額を超える場合⇒控除限度超過額を翌年以降3年間繰越
- 控除対象外国所得税の額が控除限度額に満たない場合⇒控除余裕額を最長3年間繰越
外国税額控除の繰越控除は、控除対象外国所得税の額が控除限度額を超える場合と控除限度額に満たない場合に分けられます。どちらの場合も翌年以降3年間、控除限度超過額または控除余裕額を繰り越すことができる制度となっています。



過去の繰越控除を利用するには、該当年度の確定申告で「控除余裕額」を申告しておくことが必要です
サラリーマンで確定申告を行なっていない人は、過去の年の確定申告をさかのぼって行うことで「控除余裕額」が申告できます。



これによって、過去3年の「控除余裕額」を使い、「繰越控除」が使えるようになるという訳です
外国株投資の確定申告で必要な書類
確定申告で外国税額控除を受ける際には必要な書類があります。
取り揃える書類は、以下の通りです。
- 確定申告書
- 外国税額控除に関する明細書
- 外国所得税の課せられたことを証明する書類等
- 国外所得総額の計算に関する明細書
- 各年の控除限度額や納付した外国所得税を記載した書類(繰越控除をしている場合)
課税所得から考える最適な申告方法



ここまでついてきてる?



いや、あんまり・・・



とりあえず、対応策はあとで説明するので、最後まで説明していくね
日本の課税方式は複雑怪奇であり、全てを説明しようとすると頭が混乱して、訳が分からなくなると思いますので、この項では課税所得と照らし合わせて、どの課税方式を選択するか、を考えていきたいと思います。
まず、日本の株式に関する課税には「総合課税」か「申告分離課税」の2つがあります。
また、「所得税」と「住民税」に切り分けて考える必要があります。
配当金に関する「所得税」の課税方式の選択
| 課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
総合課税を選択したときは、配当所得とその他の所得を合算して、超過累進税率を適用することになります。



結論として、課税所得がそもそも330万円より少ないと、配当金を総合課税にした場合の税率が10%となり、配当金にかかる所得税率である15%を下回りますので、総合課税にした方が税制上、有利になります
配当金に関する「住民税」の課税方式の選択
住民税の場合、「総合課税」を選択すれば一律10%となります。
対して「申告分離課税」であれば課税所得金額によらず、一律5%です。
ここまでの結論としては、住民税については「申告分離課税」を選択した方が税金は安く済みます、ということです。
ただし、自営業や無職の人で国民年金保険料または国民健康保険料を収めている人は申告分離課税を選択するとき、注意してください。
「申告分離課税」は税金は安く済むのですが、社会保険料の計算の算定根拠に入ってきます。
よって、収入が増えたと見做され、社会保険料が増額される可能性が高いので、これに当てはまる人は「申告分離課税」ではなく、「申告不要制度」を適用するようにしましょう。
この辺、税金と社会保険料という非常に難しいバランスを考える必要があるのですが、まとめると以下の通りになります。



社会保険料は負担が大きいので、無職や年金暮らしの人は住民税は「申告不要制度」を選択すべきかと思います
一方で、サラリーマンは本業の方で社会保険に加入しているので、「申告分離課税」を選んでも社会保険料が上がることはありません。
サラリーマンでメリットのある人は「申告分離課税」を選択すれば良いです。
- 国民年金:定額(所得が一定以下だと免除制度あり)
- 国民健康保険:住民税の所得によって金額が決定
- 介護保険(40歳以上):住民税の所得によって金額が決定
- 厚生年金:標準報酬月額によって金額が決定
- 健康保険:標準報酬月額によって金額が決定
- 雇用保険:毎月の給与総額によって金額が決定
- 介護保険(40歳以上):標準報酬月額によって金額が決定



また、さらにややこしい話として、外国税額控除は、所得税⇒復興特別所得税⇒住民税の順に適用されるため、所得税の段階で外国所得税10%全てを控除できているということであれば、住民税を申告不要にしたほうが税金は安くなります
どういうことか、を順を追って説明していきます。
米国株の配当から源泉徴収される住民税は、外国所得税10%が源泉徴収されたあとの90%に対して5%の住民税が源泉徴収されます。つまり、実質的な源泉徴収額は4.5%になっています。
所得税のみで全て控除できた場合、住民税には控除すべき金額はもはや存在しないのですが、申告をしてしまったがために、4.5%で済んでいたはずの税率を自らが5%に持ち上げてしまうことになります。
よって、住民税の配当課税の方式をいずれにするか、の一つの基準として、「所得税のみで控除し切れるかどうか」という観点も入れておかないと余計な税金を払うことになってしまいます。
課税選択方式のまとめ
ここまで解説してきた通り、配当金に関する税制は極めて複雑怪奇な「パンドラの箱」のようになっています。



いや、もうお腹いっぱいなんだけど・・・



さらに追い討ちをかけちゃって申し訳ないんだけど、その他の前提条件として、株式で譲渡損を出している場合は、配当金を損益通算ができるので、この場合は申告分離課税を選択する必要があるんだよ



これ、もう税金の素人には対応不可能じゃない?



だよね。なので、ここからは対応策だよ
今回のここまでの説明で分かる通り、外国税額控除を自力で計算していくのは極めて困難です。
よって、国税庁確定申告書等作成コーナーで、実際のあなたのケースを入力しながらどれがベストか、を探っていくのが最も確実な方法です。



なるほど・・・
入力しながら自動的に結果が出るからこれならできるかも!



だよね。計算した結果、逆に税金が高くなる、ということであれば、申告しなければ良いだけだしね



これ、注意点ってある?



国税のシステムなので、あくまで税金面からのみの算定なんだよね。だから、先述したような社会保険のケースは考慮されていないんだ



なるほど。
下手に申告してしまった結果、税金は還付されたけど、社会保険料が引き上がる、みたいな本末転倒なことが起きかねないわけだね・・・
追記:2024年度の税制改正による配当金節税潰しについて



あと、ここまでに解説してきた中での配当金節税については「封じ込め」が発表されてしまったんだ



ん?どういうこと?
2022年度の税制改正大綱により、この配当金節税策については2024年度から限定的にしか利用できなくなることになりました。日本経済新聞などの報道によれば、2024年度からは「所得税で選択した申告方式が、そのまま住民税にも適用される」ということになりました。
この税制改正により、課税所得が900万円を超える世帯の場合、この配当金の申告について所得税を総合課税で選択すると、住民税も自動的に総合課税となるため、実質税率は28%以上になってしまうことになります。



こうなっちゃうと、そもそもの源泉徴収税率20%より不利な状態に陥るので、2024年度以降は課税所得が330万円未満の場合のみ、この節税策を実施すべき、ということになるんだ



ややっこしいなあ・・・



とはいえ、2023 年度まではこの節税策は有効であることは付け加えておくよ
配当の二重課税問題を解決する方法のまとめ
米国株の配当金について発生する二重課税問題を解決するには「外国税額控除」を確定申告にて行う必要があります。
また、その際の申告方式ですが、所得税・住民税ともに、あなたの置かれている状況によって、税金だけではなく、社会保険にも影響を及ぼすという、かなり複雑なものなので、色々とシミュレーションした上で、決定する必要があります。



これ、ややこし過ぎるよ・・・



顧問税理士スタッフが「自分ならやらない」と言っていた理由が良く分かるよね



結局、国同士の「税の分捕り合戦」に巻き込まれてる、ってことだもんね・・・



そうだね。
ただ、若干なりともこのややっこしい状況が改善する兆しもあるんだ。以下のミニコラムで紹介するよ
二重課税問題に対応するため、2020年度から一部の投資信託で二重課税問題を解消する仕組みが導入されました。これにより、投資信託からの分配金やETFからの配当額が増えることになります。



日本証券業協会がこの対応についてホームページ上で説明していますので、抜粋として以下掲載します
これまで、お客様が証券会社等に開設している口座で保有する投資信託等について、外国株式への投資から得た利益が分配金に含まれている場合には、その投資信託等が外国において徴収された納税額(外国所得税額)と、お客様が受け取る分配金に対する所得税等で、二重に課税が行われている状態にありました。
これについて、証券業界は改善を要望していたところ、2020年1月1日より外国所得税額を考慮して所得税等が課されることとなりましたので、制度の概要についてご案内いたします。
なお、この二重課税調整措置について、お客様で必要な手続きはなく、2020年1月1日以降に支払われる投資信託等の分配金に対して、自動的に適用されます。
出所:投資信託等の二重課税調整制度開始のご案内(日本証券業協会)



おお〜
自動的に二重課税を解消してくれるんだ!



今回の改正で、確定申告を行う手間、控除しきれない二重課税分といったことが解消されることになるので、非常に大きなメリットだよね



この動きをぜひ個別株まで広げて!



「外国税額控除」は確定申告が必要なんだよね



今回の「外国税額控除」はややこし過ぎるよ・・・
自分でできる自信が全く無いや・・・



だよね。だから、そのほかの節税策も含めて税理士に全部お任せしてしまうというのも手だよ



「2億円FIRE達成者が贈る!サラリーマンでもできる節税策10選」の記事で紹介していたような複数の節税策をまとめてお願いするということだね



そうだね。正直、「外国税額控除」だけだとわざわざ税理士にお願いしても費用倒れになる可能性が高いんだ。でも、そのほかの節税策も色々とやっているのであれば、まとめて税理士に依頼しちゃえば楽だよ



税理士ってどうやって探せば良いの?



下記のサイトは、東証上場企業の「弁護士ドットコム」が運営をしており、信頼性が担保されているので、オススメだよ



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全国6,000人もいれば、自分の希望にあった税理士さんも見つかりそうだね!










