アパート投資のキャッシュフローがマイナスに転落:恐怖の「デッドクロス」

アパート投資のキャッシュフローがマイナスに転落:恐怖の「デッドクロス」

私は、木造の新築アパート(できれば3階建て)は、サラリーマンで初めて不動産物件を保有したいと考える人には最適な投資である、と考えています。

ヒイラギ

その根拠となる解説については以下記事のとおりです

ところが、この新築木造アパート投資には、保有を継続し続けることでいずれぶち当たる恐怖の事象が発生します。

不動産業界の中では「デッドクロス」と呼ばれており、新築アパート購入した後、売却せずに長期間保有し続けることを考えているのであれば、必ず念頭に置いておくべきです。

初めてサラリーマン大家になる人は「とにかく物件が欲しい・欲しい病」に陥っているケースが多く、物件の出口をはっきりと見定めて購入していない人がいます。

デッドクロスをきちんと把握しておかないと投資期間の23年後以降、とんでもない目に逢います。

目次

デッドクロスとは何か?:減価償却期間終了後に痛い目を見ないために

さて、では「デッドクロス」とはどう言った事象のことを言うのでしょうか?

結論から言えば

税金を支払った際に、キャッシュフロー(=手残り)がマイナスになる現象

のことを言います。

これだけだとさっぱりだと思いますので、実際に事例を挙げて解説していきたいと思います。

デッドクロスを考える上での条件設定(購入初年度)
  • 新築の木造アパートを購入
  • 銀行からの融資は1億円のフルローン(30年間)
  • 土地代金は5600万円、建物代金は4400万円
    建物の減価償却費は毎年200万円(木造アパートは22年間の耐用年数)」
  • 物件の利回りとして、新築時7%と想定 = 家賃収入は700万円
  • 銀行への返済は元利均等払い(どの月も返済額は同じ。なので、最初の方になるほど利息割合が高い)
    初年度はローン返済の金利分で300万円、元金返済で150万円と設定
    ※厳密な金利計算ではありません。以後の話を分かりやすくするために設定しています
  • 管理会社への管理委託料など、年間の諸経費関連で100万円と設定

以上のデータを元に、まずは初年度に支払うべき税金を計算していきます。
(不動産取得税など、購入にかかわる税金は考えません)

①税金の計算上のシミュレーション(購入初年度)

家賃収入(700)−減価償却(200)−経費(100)−利息(300)=利益(100)

100万円×0.3(法人税率)=30万円(税金)

このケースでは、税金については30万円となりました。

しかしながら、税金と実際のキャッシュフローでは以下の2点で計算が異なります。

  • 税金計算には減価償却費を参入するが、キャッシュフロー上は含めない
  • 税金計算には銀行への元金返済は参入しないが、キャッシュフロー上は含める

この2点が今回のデッドクロスを考えるにあたって非常に重要なポイントとなります。

それでは、実際のキャッシュフロー上はどうなるか、試算してみましょう。

②実際のキャッシュフロー(購入初年度)

家賃(700)−経費(100)−元金(150)−利息(300)−税金(30)=手残り(120)

先ほどの「①税金の計算上のシミュレーション(購入初年度)」との違いはお分かりでしょうか。
「減価償却費」は見かけ上の経費のため、キャッシュフロー上はプラスに働きます。
一方で、元金と税金については、キャッシュフロー上、マイナスに働きます。

簡易的なシミュレーションとして上記は組みましたが、新築アパート(1億円)の投資に対して、利回り7%の物件で、手残りは120万円ですので、私の保有しているアパートとほぼ同内容であり、実態としての肌感覚に合っています。

ここからが恐怖の試算:デッドクロスの正体

それでは、23年目以降を見てみましょう。

築年数に応じた家賃の下落がありますので、話の簡略化のため、初年度家賃から約▲15%ダウンの600万円になっているものとします。また、経費は50%アップの150万円とします。

ここで見ておいていただきたいポイントを先にお話ししておくと「減価償却が取れなくなったら税金とキャッシュフローはどうなるか」ということです。

まず、税金の計算をしてみましょう。なお、銀行融資が元金均等払いなので、23年目まで進めば利息返済が進んでいるため、元金150→300、利息300→150へと変更して計算します。

①税金の計算上のシミュレーション(23年経過時点の試算:税金除き)

家賃収入(600)−減価償却(200)−経費(150)−利息(150)=利益(300)

300万円×0.3(法人税率)=90万円(税金)

次に、キャッシュフローのシミュレーションをしてみます。

これが衝撃の数字になります。

②実際のキャッシュフロー(23年経過時点の試算)

家賃(600)−経費(150)−元金(300)−利息(150)−税金(90)=手残り(▲90)

いかがでしょうか。

新築の木造アパートの場合、耐用年数が22年までですので、減価償却費が取れなくなった23年目以降は、税務上の「損金」参入がなくなります。よって、キャッシュフローがマイナスになります。

税務上は利益が出ているのに、キャッシュフロー上は100万円近いマイナスに・・・

ちなみに、上記のキャッシュフロー上で税金を支払う前段階では、手残り「ゼロ」になります。
アパート投資はそもそも築古になると成立させることが厳しくなってくるので、有り得る数値でしょう。

②実際のキャッシュフロー(23年経過時点の試算:税金除き)

家賃(600)−経費(150)−元金(300)−利息(150)=手残り(0)

助手のひつじくん

ええ〜
デッドクロスってとんでもない事象だね・・・

ヒイラギ

そうなんだよ。税金のための計算と、現金(キャッシュフロー)の計算が違うから、こんなことが発生してしまうんだ

数値で追っていくと分かるが肌感覚で理解できない「デッドクロス」

こうなってしまう理由が、感覚として「とても分かりにくい」と思います。

そもそもサラリーマン大家に期待を抱いて投資していこうと考えている人が、この計算を見てしまうとやる気がなくなるので、アパート業者は敢えて触れないパンドラの箱なのかもしれません・・・

ただ、このデッドクロスがしっかり理解できていないと、将来のキャッシュフローがマイナスに転じてしまい、非常に困った事態になってしまいます。

税務上は利益が出ていて税金を払わないといけないのに、手元のキャッシュフローはマイナスになってしまうのがデッドクロスの恐怖です。

不動産への投資である以上、税金を支払ったとしても、手元にキャッシュフローが残らないと、全く意味がありません。

なお、今回は7%で試算しましたが、利回りで8%を切るような新築物件については、融資条件によっても異なりますが、このデッドクロスは「発生するもの」と思って、投資に取り組んだ方が良いです

新築木造アパート投資の課題−デッドクロスの4つの回避手法−

税務上の利益と、キャッシュフロー上の手残りが見事に逆転して、それまでキャッシュフローを生んでいたアパート投資を一転して地獄に叩き落とされてしまうこのデッドクロス。

回避する方法はあるのでしょうか?

実は回避手段はいくつかありますので、この項では、「デッドクロスを回避する方法」はご説明します。

回避手法1:木造の耐用年数以内(22年以内)に売却する

デッドクロスは主に23年目以降の減価償却が取れなくなったタイミングで発生する問題ですので、投資しているアパートの耐用年数以内に売却してしまえば良いのです。そうすれば、キャッシュフロー地獄に陥ることはありません。

非常にシンプルですが、問題の根元を断つ方法なので、一発で問題が解消します。

回避手法2:他物件を買い増し、費用を発生させる

こちらもデッドクロス回避には良く利用される方法です。

アパートを1件のみ保有していると、その物件でデッドクロスが発生してしまうと回避不能ですが、他にも物件を保有し、そちらで減価償却費を積むことができれば、この問題を回避することができます

ただし、木造の築古物件を購入する場合、耐用年数が4年になってしまうため、デッドクロスの回避のために、どんどん保有物件を増やしていかなければならない、といったことになる可能性があります。

世にある耐用年数22年を超える築古木造物件に買い手がつく理由の一つが「大きく減価償却が取れること」です。

耐用年数である22年を超えていると、購入金額に対して4年で償却ができるので、購入した年度やそこから2〜3年で大きな利益が発生することが見込まれている場合は、木造の築古物件を購入することで減価償却費を多く損金に参入し、税金の支払いを圧縮することが可能になります。

節税アイテムとして多くの物件を持っている投資家などには好まれています。

回避手法3:銀行融資を耐用年数以内に抑える

すでに物件を銀行融資で購入してしまっている場合はこの選択肢は取れませんが、これから物件購入を考えているのであれば、銀行期間からの融資期間を耐用年数以内に抑えてしまえば、デッドクロスは発生しません。
(ただし、確実に発生しない訳ではなく、家賃下落や経費増加など、諸条件によっては22年経過前にデッドクロスが発生することがあります。詳細は後述)

ただ、デッドクロスは回避できる一方で、融資期間を圧縮することによって、月々のローン返済額が多くなることから、毎月のキャッシュフローが低下してしまうという問題が発生します。

回避手法4:法人で物件を保有する

マイクロ法人=資産管理会社としてアパートを保有しておけば、いろいろな経費を計上できるようになります。

保有アパートで減価償却費が取れなくなったとしても、法人全体の経費(役員報酬、倒産防止共済など)を増額させることで、税金コントロールが可能になります。

まとめ:新築アパート投資の盲点:デッドクロスには要注意

以上がデッドクロスの解説となります。

新築アパートの場合、せっかく銀行から長期間の融資を受けてキャッシュフローを伸ばせるのに、わざわざ耐用年数以下の22年未満で融資を組むようなことは考えられません。

融資期間を長めに取ればとるほど、月次のローン返済額が抑えられる=キャッシュフローが増加する訳なので、融資期間は極力長めに取るのが早期の資産形成には重要です。

一方で、購入時の目先の関心はどうしても融資期間と金利になりますが、遠い将来の出口として「デッドクロス対策」も思い描いておかないと後で大変なことになります。

デッドクロスを回避する方法は上記に挙げたとおり、「売却」「買い増し」「法人による別経費の捻出」辺りが現実的なところになります。

ただ、すでに(法人ではなく)個人でアパートを購入しているケースでは、法人へ保有物件を付け替えるとなると、不動産取得税や登記費用など、様々なコストが別途かかってきてしまいます。

よって、既に個人として新築アパートに取り組んでいる場合は、落とし所としては「売却」か「買い増し」が現実的なデッドクロスの回避策になるでしょう。

新築木造アパート投資は、サラリーマン大家にとっては、リスクとリターンの最適解だと考えていますが、こういった落とし穴もあることは認識して投資をスタートしましょう。

なお、家賃の下落スピードや、経費の増加傾向によっては、23年目を待たずして、その手前のあたりからデッドクロスに陥ってしまう場合があります。

「減価償却期間が切れる22年目までに売却すれば良いんだろう」と悠長に構えていると、いつの間にかデッドクロスにはめ込まれていた、なんてことが起こり得ますので、注意してください。
(サラリーマン大家で、月次は黒字なのに自己破産するのはこのデッドクロスに見舞われているケースが多いです)

助手のひつじくん

遠い将来のことだから、最初からイメージできないかもね

ヒイラギ

そうだね。だけど、知っておけば対策は取れるんだ。
怖いのは知らないままにずっと持ち続けることだね

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